異音 (allophone)
ある言語において、その母語話者には「同じ音」と見なされるものの、相補分布をし、音声的に違いがある音のことです。異音は[ ]で囲んで表します。
英語音声学一般
ここでは英語音声学の基本的な用語を、 英語の例をあげながら簡潔に解説しています。 英語と日本語を比較する際に必要となる、 日本語の音声に関する用語についても含まれています。
ある言語において、その母語話者には「同じ音」と見なされるものの、相補分布をし、音声的に違いがある音のことです。異音は[ ]で囲んで表します。
文や発話でのピッチ(声の高さ)の変化のことです。英語のイントネーションは、音調群への区切り方、焦点(フォーカス)の置き方、音調(ピッチの変化の仕方)の3点に分けて考えることができます。
音節とは母音を中心とした音のかたまりのことです。pi-an-oは3音節、gui-tarは2音節といったように、長い単語を区切るときに使われる単位です。
音節は中心である核 (nucleus)、核の前の頭子音 (onset)、核の後ろの尾子音 (coda)で構成されます。eye /áɪ/のように核のみの音節もありますが、頭子音 (spy /spáɪ/)、尾子音 (ice /áɪs/)、または両方 (spice /spáɪs/)をもつ音節もあります。核と尾子音を合わせて韻といいます。
母音の代わりに音節の核となれる聞こえ度の高い子音のことです。little /lɪ́tl/, sudden /sʌ́dn/, rhythm /rɪ́ðm/はすべて2音節語ですが、それぞれの語の第2音節の核は音節主音的子音である/l, n, m/です。
ある言語において、対立分布をして意味の違いを生み出す音の単位のことです。音素は/ /で囲んで表します。
イントネーションを構成する3つの要素の一つで、上昇・下降など、音調群がもつピッチ(声の高さ)の動きのことです。平叙文やWh疑問文で使われる下降調 (fall)は、焦点からピッチが下がります。Yes-No疑問文などでよく使われる上昇調 (rise)は、焦点から徐々にピッチが上がります。上昇と下降を組み合わせた、上昇下降調 (rise-fall)や下降上昇調 (fall-rise)と、ピッチの上下のない平坦調 (level)もあります。
1つの音調をもつイントネーションの単位のことです。音調群は文法の単位とも一致します。I lived in London || when I was a child. という文は2つの音調群に分けて発音できますが、2つの音調群はそれぞれ節と一致します。
母音で終わる音節のことです。play /pléɪ/, know /nóʊ/, tea /tíː/が英語の例です。
閉鎖音をつくる過程で、閉鎖の開放が省略されることを指します。閉鎖音が発話の最後で使われるときや (Stand up.)、閉鎖音のすぐ後ろに同じ調音位置で発音される別の閉鎖音が続いたときに、1つ目の閉鎖音の開放が省略されることがあります (hot dog, background)。開放が省略されるだけで、閉鎖音そのものが消えるわけではありません。
無声閉鎖音の閉鎖が開放されて破裂が起きた際に生じる、強い息漏れの音のことをいいます (post [phóʊst], ten [thén], kick [khɪ́k])。これは、閉鎖が開放された後、声帯振動が始まるまでに時間的な遅れが生じることによるものです。
母音や子音が同じエネルギーで発音された際、遠くまで聞こえる度合いのことです。母音が子音より、子音の中では接近音や鼻音が破裂音や摩擦音よりも聞こえ度が高い音です。聞こえ度の高い音(通常母音)が音節の核となります。
文の中で弱く発音される語のことです。前置詞・冠詞・人称代名詞など、文法的な役割をもつ語が機能語です。
イギリスの音声学者Daniel Jones が考案した、世界の言語の母音を説明する際の基準とするために設けられた母音のことです。第一次基本母音 ( [i], [e], [ɛ], [a], [ɑ], [ɔ], [o], [u])と、それらの円唇性を逆にした第二次基本母音、合計18個あります。
機能語が対比など特別な理由で強調されるときの発音のことです。例えば、forの弱形は/fɚ/ですが、強形は/fɔ́ɚ/となります。
単語の中で、ある音節が他の音節よりも目立って聞こえるときに、その音節に強勢があるといいます。mórn-ingは第1音節に、to-níghtは第2音節に語強勢 (word stress)をもちます。また、文においても強く発音される音節と弱く発音される音節があり、これを文強勢 (sentence stress)ということがあります (The cát is sléeping on my láp.)。英語では強勢をもつ音節は、高く・強く・長く・はっきりと発音されます。
強勢拍リズムを保つために、強勢が連続することを避けて語強勢の位置が移動することです。単独ではfì̀ftéenと発音されますが、fiftéen bóysのように直後に強勢が続くときは、第1音節のfí́f-に第1強勢が移動して、fífteen bóys となります。
強勢がほぼ等間隔で繰り返される英語のようなリズムのことです。強い音節と弱い音節のコントラストがはっきりしているため、強弱交替のリズムとも呼ばれます。gó to schóol は強弱強、gó to the párkは強弱弱強のリズムをもちます。
強勢をもつことのできる母音のことです。強母音は明確な音色をもち、その音声的・音韻的特徴から、短母音・長母音・二重母音に下位分類されます。
接近音/l/の異音の一つです。/l/を発音する際に、後舌面が少し盛り上がることで(軟口蓋化)、暗い音色を伴います。/l/の後ろに子音が続かないとき、つまり語末 (apple [ǽpl̴]) や他の子音前 (milk [mɪ́l̴k])で使われます。
歯茎と軟口蓋の間の硬口蓋と前舌面でつくられる子音です。英語では接近音の/j/が硬口蓋音です。
舌端と歯茎およびその後ろの硬口蓋でつくられる子音です。英語では摩擦音の/ʃ/, /ʒ/と破擦音の/tʃ/, /dʒ/ が硬口蓋歯茎音です。
ある言語において、音素が一つだけ異なるために意味が変わるような語の対のことです。late−rate, face−faith はそれぞれ最小対の例です。最小対が存在する、つまり音を入れ替えると単語の意味が変わるということは、当該言語でその2つの音が音素であると証明できます。
呼気が肺から口の中を通って外に出ていくときに妨害が起きる音のことです。子音は(1)声帯振動の有無、(2)口の中のどの位置で妨害をつくるか(調音位置)、(3)どのような方法で妨害をつくるか(調音方法)、という3つの基準を使って分類します。
上歯の裏と舌先でつくられる子音です。英語では上歯の裏と舌先を軽く接触してつくる /θ/, /ð/が歯音です。
上歯の裏のすぐ後ろ(歯茎)と舌先(舌尖または舌端)でつくられる子音です。英語では上歯の裏と舌先を軽く接触してつくる /t/, /d/, /n/や、摩擦音の/s/, /z/, 接近音の/l/, /r/ が歯茎音です。
呼気が口の中を通り抜ける際に、上の前歯にぶつかるために強いノイズ音が生じる子音です。英語では /s/, /z/, /ʃ/, /ʒ/, /tʃ/, /dʒ/が歯擦音です。
下の調音器官の一つです。舌尖・舌端・前舌面(硬口蓋に対応)・後舌面(軟口蓋に対応)・舌根のパーツに分けて考えます。「ぜつ」と読むこともあります。
文の中で弱く発音される機能語がもつ弱い発音のことです。弱形には弱母音の使用(she /ʃi/, an /ən/)や音の脱落 (him /(h)ɪm/, and /ən(d)/)といった音声的特徴が見られます。
強勢をもつことができない母音のことです。曖昧な音色をもちます。単語では多音節語で強勢をもたない音節に現れ(例:sófa, inténd)、文レベルの発話では機能語を中心とした弱く発音される語にも現れます(例:My són is at schóol.)。
イントネーションを構成する3つの要素の一つで、音調群の中で最も目立って発音される音節を含む語を指します。I lived in LONdon || when I was a CHILD.のように、音調群全体が新情報であれば、通常音調群内の最後の内容語に焦点が置かれますが、文脈によって話者が強調したい語に焦点を置くこともできます。
上歯と下唇でつくられる子音です。英語では上歯と下唇を軽く接触してつくる /f/, /v/が唇歯音です。
のどにある軟骨で囲まれた喉頭 (larynx)の中にある、2枚のひだのことです。声帯を振動させたり、開いたり閉じたりすることで有声音と無静音の区別をします。また、声帯の振動の仕方や開き方をコントロールすることによって、声の高さや声質を変えることができます。
声帯や、声帯が開いた空間(声門)でつくられる子音です。英語では摩擦音の /h/が声門音です。
声帯で閉鎖をつくり発音する[ʔ]の子音です。英語では音素ではありませんが、/t/の異音としてよく使われることがあります (mountain [máʊnʔn], It was … [ɪʔ wəz])。
本来発音されない音が加わることです。英語では、母音同士のリンキングで/j/や/w/が挿入されることがあります。また、学習者が英語の子音連続の間に母音を挿入してしまうことを母音挿入 (vowel epenthesis)といいます (try /tráɪ/ → [torai])。
上の調音器官と下の調音器官が近づくことによってつくられる音です。英語では /w/, /r/, /j/が接近音です。呼気の妨害の度合いが小さいという音声的性質から、半母音(semivowel)と呼ぶこともありますが、音節の核になることができないため子音に分類されます。調音後に後続の母音にすぐに移行するという特徴があります。
呼気が舌の両側または片側から通り抜けるときに生じる子音です。英語では /l/が側音(側面音)です。
多音節語の中で、最も目立つ音節に第1強勢が置かれているといいます。stúd-yは第1音節に、de-cídeは第2音節に、ùn-der-stándは第3音節に第1強勢をもちます。
多音節語の中で、第1強勢の他に強勢をもつ音節がある場合、その強勢を第2強勢と呼びます。com-mú-ni-càteは第2音節に第1強勢、第4音節に第2強勢をもち、ùn-der-stándは第1音節に第2強勢、第3音節に第1強勢をもちます。強勢をもたない音節には、to-mór-row の第3音節のように強母音をもつ音節と、第1音節のように弱母音をもつ音節とがあります。
丁寧に読むと発音される音が省略されることです。母音では弱母音 (family /fǽm(ə)li/)、子音では/t/や/d/ (postcard /póʊs(t)kɑ̀ɚd/, handshake /hǽn(d)ʃèɪk/)の脱落が最も多く見られます。
後に必ず子音が続く音節に現れ、相対的に短い母音です。標準的な英語では/ɪ/, /e/, /æ/, /ɑ/, /ʌ/, /ʊ/ が短母音に分類されます。
発音されている間、舌のかまえが一定に保たれる母音です。舌のかまえが変わらないため、音色も一定して変わりません。標準的な英語では、短母音 (/ɪ/, /e/, /æ/, /ɑ/, /ʌ/, /ʊ/)と長母音 (/iː/, /ɑː/, /ɔː/, /uː/, /ɚː/)は単母音と分類されます。
言語音をつくるために使われる、舌、口蓋垂、硬口蓋、軟口蓋、声帯、歯茎、唇、歯、舌などの器官です。
後に子音が続く音節と子音が続かない音節の両方に現れ、相対的に長い母音です。標準的な英語では/iː/, /ɑː/, /ɔː/, /uː/, /ɚː/ が長母音に分類されます。
子音がつくられるときに使われる場所のことです。調音点ともいいます。VPMのPlaceに対応します。
完全な閉鎖をつくる、鼻に息がぬけるなどの、子音をつくる際の呼気の妨害の仕方を示します。調音様式ともいいます。VPMのMannerに対応します。
音節、リズム、イントネーションなど、一つひとつの分節音よりも大きい単位のことを指します。
周囲の音に合わせるために、ある音の特徴が変化することです。that pen /ðǽp pén/のように、歯茎音/t, d, n/が、次の音に合わせて調音位置を変える位置の同化が多く見られます。次の音の特徴を先どりする同化を逆行同化といいます。
文の中で強く発音される語のことです。名詞・動詞・形容詞・副詞といった、情報量をもつ単語が内容語です。
硬口蓋よりさらに奥の軟口蓋と後舌面でつくられる子音です。英語では閉鎖音の/k, ɡ/と鼻音の/ŋ/が軟口蓋音です。
発音されている間、調音器官が一つの母音のかまえから別の母音のかまえへと移行する母音です。移行に伴い音色も変わりますが、全体で一つの母音と見なされます。標準的な英語では、/eɪ/, /ɔɪ/, /aʊ/などが二重母音に分類されます。
口の中で、上の調音器官と下の調音器官が閉鎖音のように接触し、閉鎖が開放される時に摩擦音のようなノイズの音ができる子音です。英語では /tʃ/, /dʒ/が破擦音です。
呼気が鼻から出ていく子音です。英語では /m/, /n/, /ŋ/ が鼻音です。
つづり字と発音の関係には一定の規則性があります。フォニックスは、それをルールとして明示的に説明した指導法のことです。
母音や子音など、一つひとつの音のことです。
子音で終わる音節のことです。place /pléɪs/, ghost /góʊst/, ten /tén/が英語の例です。
口の中のどこかで、完全な閉鎖が起こる子音です。英語では /p/, /b/, /t/, /d/, /k/, /ɡ/が閉鎖音です。
呼気が肺から口の中を通って外に出ていくときに妨害が起きない音のことです。母音は(1)舌をどの程度上げるか、(2)舌のどの部分が高いか、(3)唇の丸めの有無(円唇性)、という3つの基準を使って分類します。
口の中で、上の調音器官と下の調音器官が軽く接触してできる狭い隙間から息が抜けてノイズのような音ができる子音です。英語では /f/, /v/, /θ/, /ð/, /s/, /z/, /ʃ/, /ʒ/, /h/が摩擦音です。
声帯が振動しない音のことです。言語音を発音するとき、呼気がのどを通り抜けて口や鼻から外に出ますが、その際に、声帯がふるえない音が無声音です。
有声音であると分類される音が、無声音になることをいいます。例えば、英語では無声閉鎖音に後続するときの接近音の無声化 (play [pl̥eɪ])、日本語では無声音に囲まれたときの母音の無声化 (くつ [kɯ̥tsɯ])があります。
日本語母語話者が音節の代わりに使う単位のことです。かき/ka.ki/は2モーラ、みかん/mi.ka.ɴ/は3モーラの語です。母音を含む自立拍と、母音をもたない撥音「ん」や促音「っ」のような特殊拍があります。
モーラがほぼ等間隔で繰り返される日本語のようなリズムのことです。ほぼ同じ長さをもつモーラが連続するため、連続のリズムとも呼ばれます。音節がほぼ等間隔で繰り返されるフランス語のような音節拍リズムと似ています。
声帯が振動する音のことです。言語音を発音するとき、呼気がのどを通り抜けて口や鼻から外に出ますが、その際に、声帯がふるえて「声」が出る音が有声音です。
2つの音がお互いに影響を与え合い、1つの音に融合する同化のことです。歯茎音 /t, d, s, z/の後ろに接近音/j/が続くとき、それぞれ/tʃ/ (get you), /dʒ/ (did you), /ʃ/ (miss you), /ʒ/ (as you) のような音が聞かれます。
上唇と下唇でつくられる子音です。英語では両唇を完全に閉鎖することによってつくる /p/, /b/, /m/が両唇音です。唇を丸めて発音する接近音/w/も両唇を使う音です。
発話の中で単語同士がつながって発音されることです。stand upのような子音と母音、sit downのような子音同士のリンキングがあります。see it /síː j ɪt/, go over /góʊ w óʊvɚ/のように、母音同士をスムースにつなげるために音が挿入されることもあります。
標準的なイギリス英語のようなR音性をもたない(非R音性の)変種で、リンキングの結果/r/が発音されることです。far away /fɑ́ː r əwéɪ/のように、後ろに母音がきたときに/r/が発音されます。saw it /sɔ́ː r ɪt/のようにつづりにはない/r/が挿入される場合をintrusive rといいます。
つづり字<r> をすべての位置で発音する性質のことです。一方、つづり字<r> を母音の前だけで発音する性質のことを非R音性 (non-rhotic)といいます。例えばcarとhorseを、/kɑ́ɚ/, /hɔ́ɚs/と発音するのはR音性で、/kɑ́ː/, /hɔ́ːs/と発音するのは非R音性です。R音性の代表例が標準的なアメリカ英語、非R音性の代表例が標準的なイギリス英語です。R音性の有無 (rhoticity)は、英語変種を説明する際の指標の一つです。
英語の/t/が、舌で上前歯の付け根を一瞬たたく[ɾ]の音に置き換わる現象です。語内の「強母音+/t/+弱母音」(wáter) または「弱母音+/t/+弱母音」(actívity)という位置、加えて単語間では「強母音+/t/+強母音」(gét úp)という位置で起きます。
V=voice(声帯振動の有無)、P=place(口の中の妨害をつくる位置/調音位置)、M=manner(妨害をつくる方法/調音方法)を意味し、子音の3つの分類基準を簡潔に表します。